サイコシンセシスの本と書評
自分自身が自分自身の「父」であり「母」であり「友」であり「教師」です。
教育に関係ないと思わないで、できたら読んでください。
新刊
『サイコシンセシスとはなにか』
自己実現とつながりの心理学
平松園枝著 発行 トランスビュー 1600円プラス税
入門レベルから
- 『好きな自分・嫌いな自分・本当の自分(自分の中に答えが見つかる方法)』
平松園枝著 大和出版 1500円プラス税
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- 『愛することを選ぶ』E.キャディ、D.E.プラッツ著 国谷誠朗・平松園枝共訳、誠信書房、2200円
- <愛することを選ぶの紹介文>>へ移動 移動しない場合はこのページの下にあります。
- 『サイコシンセシス』R.アサジオーリ、国谷誠朗・平松園枝共訳、誠信書房、3800円
『サイコシンセシス』の書評へ移動
- 『内なる可能性』P.フェルーチ著、 国谷誠朗・平松園枝共訳、誠信書房、3090円
- 『意志のはたらき』R.アサジオーリ、国谷誠朗・平松園枝共訳、誠信書房、3800円
- 『人間性の最高表現 その輝きを実現した人々』P.フェルーチ著、 国谷誠朗・平松園枝共訳、誠信書房、上2400円 下2200円
カウンセラー向けの本
- 『花開く自己=カウンセリングのためのサイコシンセシス』
M.Y.ブラウン、国谷誠朗・平松園枝共訳、誠信書房、3500円
教師向けの本
- 『喜びの教育/サイコシンセシス教育入門』ダイアナ・ウィットモア著 手塚郁恵訳、春秋社、3200円
- 『子供と親と教師のための優しいサイコシンセシス』エヴァ・フューギット著 平松園枝・手塚郁恵訳、 春秋社、2100円
【ホリスティックな視点の本】
『ダライ・ラマ/他者と共に生きる』ダライラマ14世テンジン・ギャツォ著、春秋社、2900円プラス消費税
『ホリスティックな教師たち』ジョン・ミラー著、 吉田敦彦・中川吉晴・桜井みどり訳、学習研究社、2600円 この本の書評へ移動 移動しない場合はこのページの下にあります。
『ホリスティック教育入門』日本ホリスティック教育協会編、柏樹社、1600円
『実践ホリスティック教育』日本ホリスティック教育協会編、柏樹社、1800円
『ホリスティック教育/いのちのつながりを求めて』ジョン・ミラー著、吉田・中川・手塚訳、春秋社、2900円
『ホリスティック教育論/日本の動向と思想の地平』吉田敦彦著、日本評論社、2800円
『喜びはいじめを超える/ホリスティックとアドラーの合流』、高尾・平出・手塚・吉田編、春秋社、2200円
『森と牧場のある学校』、手塚郁恵著、春秋社、1600円
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書評
「好きな自分・嫌いな自分・本当の自分(自分の中に答えが見つかる方法)」の書評
★★本のタイトル・著者・出版社・値段★★
平松園枝著 大和出版 1500円プラス税
まず目次の紹介をします。
序章 答えは自分の中にある starting from within
色々な自分と本当の自分
第一章 自分の中にいるたくさんの私
誰の中にもこんなにたくさんの小さな人格がある
小さな私=サブ・パーソナリティーに振り回されるということ
嫌な自分を変えようとしないで
第二章 世界とつながっている私たち サイコシンセシスの人間観
自分で「自分」と思っているのは「本当の自分」の一部にすぎない
「生かされている!」ホリスティックな人間観
あなたは、あなたの中にいのちの神秘を宿している
調和と調整 サイコシンセシスの方法論
第三章 まず、あなたの中の小さな私に気づく
セルフがサブ・パーソナリティーを肯定的に扱う
あなたの中のセルフに気づこう
あなたの中のサブちゃんに気づいてあげよう
第四章 今、あるがままに自分を受け入れよう
できることと出来ないことを分ける知恵
さて、その上で、何ができるか? 自分に出来ることを選ぶ
どんな時にもとらえ方は変えられる
第五章 サブちゃんの言い分を理解しよう
いやなサブちゃんにもそれなりの言い分がある
どうしてこういう性格になったのか?
「〜すべき」「〜してはだめ」「〜ねばならない」自分を縛る信条
認めてもらうためには必要だった
あなたの信条を点検してみよう
サブ・パーソナリティーにはトランスパーソナルの特性も隠れている
第六章 けなげな自分をねぎらってあげる
十分ねぎらって感謝しよう
セルフとサブちゃんとの対話
第七章 解き放たれると人生はこう変わる
セルフが指揮をする人生
いつでも人生は選びなおせる
対人関係はどう変わるのか?
セルフの力をどう人生に生かすか?
自分の人生の主人公になろう
第八章 自分の「意志」で自分らしく生きてゆく
「自分の意志」とは何か
セルフの意志をみつける
人生の意味
終章 サイコシンセシスの大きな可能性
★★こういう人におすすめ(しません)★★
★★なぜサイコシンセシスなのか★★
★★なぜサブ・パーソナリティーなのか★★
なぜ魂なのか?なぜ「愛 love」なのか
サブ・パーソナリティー=だれもが多重人格という人間観★★
★★なぜ魂なのか?なぜ「愛 love」なのか★★
書評
★この度「好きな自分・嫌いな自分・本当の自分(自分の中に答えが見つかる方法)」
という本が出版されました。大和出版、定価(本体1500円+税)著者は平松園枝さん(内科専門医でありサイコシンセシス研究会代表)です。他のサイコシンセシスの本と同じように、長年の「学び」と「実践」ワークショップ指導のなかでうまれた本です。翻訳本のもつ論理展開のながれから自由になり日本語で生活する日本人に取りつきやすく・読みやすく書かれた本です。大和出版の読みやすさに対する編集の努力のあとも感心します。
★この本を次のような人に奨めます(奨めません)
☆物事や人生を「良い・悪い」で教育され自分を「良い・悪い」で判断して苦しんでいる人には
『ああこういう「ライフ(いのち・生活・生き方・人生)」もあったのだ』と気づき「癒し」の始まりになるかも知れません。
☆物事や他人の生活・生き方・人生を「良い・悪い」やパターン(性格・類型)で判断する立場になってしまっている人には、いままでの判断の根拠(世界観)が崩れて奈落の底におちいる本かもしれません。
☆人生の分かれ道にいる人で早急に「良い・悪い」を早急に知りたい人にとっては、厄介な心理学かもしれません。あなたに代わって「良い・悪い」で判断してくれないからです。でも、この本を読むぐらいの時間があれば、読んでみればいかがですか。「良い・悪い」を判断する事の必要性そのものが変質してしまうかも。
☆言葉(本や知識のレベル)だけで「なにかすてきで簡単で便利な生き方や教育方法を知っておこう」という人には、「あっそう、この本も良いこと書いている」だけかも。お次の本にどうぞ。
☆人生を安易に生きる方はありません。それぞれの人の「ライフ(いのち・生活・生き方・人生)」の重さはあります。「人間にもっとも辛い体験を与えてくれるのは、人間関係です。」でも同時に「人間に最もすばらしい体験を与えてくれるもの、それは人間関係です」人生を安易に生きる方はありませんが、シンプルな生き方でも喜びを見つける道はあります。
☆いままで、さまざまな医学・教育・哲学・心理学・宗教・精神を生活の中の問題として学んできた人には、全体をうまく整理をしてくれる本だとおもいます。他にもサイコシンセシスの本はあります。ホームページを見てください。
http://psychosynthesis-japan.netまで。
★★★★ホリスティックな心理学(サイコシンセシス)について★★★
なぜサイコシンセシスなのか
統合心理学(サイコシンセシス)は、910年代にアサジオーリが創設した心理学です。サイコシンセシスとは、サイコ・アナリシス(精神を分析すること)と反対の意味です。つまりサイコ・シンセシス(精神を統合すること)です。原因は結果を生み出す事は事実ですが、人間の心の問題では、複合原因が多く、原因特定は困難です。過去の原因が解ったからといって、将来の問題解決にはなりません。サイコシンセシスは人間のホリスティックな「ライフ(いのち・生活・生き方・人
生)」の調和統合をめざした未来志向の心理学です。
☆実験心理学や無意識の分析心理学などの潮流に「愛
love」と「魂」と「意志」を取り戻した心理学といわれます。日本にはトランスパーソナル心理学が先に紹介されたましたが、サイコシンセシスを学ぶことで、「なぜ「魂」などのトランスパーソナル?」が理解できると思います。同じく、「潜在意識ではなくなぜ「意志」を重要視するか?」か、「なぜ知性ではなく「愛
love」なのか?」という事も、この本で理解できると思います。
★もう一つのサイコシンセシスの特徴は、オープンな体系であることです。アサジオーリはサイコシンセシスの目的を広げようとしたが、サイコシンセシスの元に一つの統括組織を作ろうとはしなかった。目的は「それぞれがそれぞれの人生観や世界観をつくり統合してゆく事を可能にする。オープンな体系です。総本山的な一つの統括組織を作ることは、目的と手段のはき違えであるというのがアサジオーリの考えだと思います。この精神でつながっていることが、サイコシンセシスのガイド(カウンセラー)達の共同体意識(コミュニティのきずな)と言えるかも知れません。みなさんもぜひ、この共同体意識に加わりませんか!!
★★サブ・パーソナリティー=だれもが多重人格という人間観★★この本で、最初に読者にガイドすることは、「自分の中にいるたくさんの私(サブ・パーソナリティー)」に出逢うことです。従来型の閉鎖思考の人間観から、オープンでホリスティックな人間観にトランスフォーム(質的変容)する事を主張しています。☆従来の人間観とは、人間を二元的に「好きな自分vs.
嫌いな自分」「よい性格vs.
悪い性格」などと捉えること。「良いものはのばすが、好ましくないものは徹底的に戦ったり、排除したり、押さえつける」という姿勢でした。☆サイコシンセシスのサブ・パーソナリティーという人間観は「誰の中にも、好きな自分も、嫌いな自分もある。誰もが多重人格」です。多重人格であることが悪いのではないのです。特定のいくつかのサブ・パーソナリティーが、トータルとしての一人の人格に混乱を及ぼしたり他人に悪い影響を及ぼすから問題になるのです。
同様に、従来の人間についての否定的な見方の概念(アダルトチルドレン・依存症等)に、対してホリスティックな人間観から見直しのをガイドしてくれる本です。
目次の一部を紹介しますので、読みとってください。
この本の特徴としては、目次がながく、目次から内容が推測できる様になっています。
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本 「サイコシンセシス」の書評
書評
「サイコシンセシス」の視点と日本のホリスティック教育への貢献の可能性
1. サイコシンセシスについての説明
私はサイコシンセシスの案内役(ガイド)をしていますが、「サイコシンセシス(精神統合)とはどういうものか簡単に説明してくれ」とよく聞かれ、説明に苦労してきました。最近は、一般的な日本人には「アサジオーリ派の統合心理学です。イタリアの医者であり心理学者であるR.アサジオーリが1910年代から20年代にかけて確立しました」とまず答えます。実は、アサジオーリ派の統合心理学というのは、私が勝手に付けた通称です。日本人は何々派という分類がとても好きなようなので、、。続いて、「フロイトが、無意識を分析する心理学つまり、サイコ(精神)・アナリシス(分析)を始めました。そして、ユングも、集合無意識を分析する心理学を始めました。アサジオーリは最初にフロイトに学んだのですが、サイコ(精神)をアナリシス(分析)だけでは不完全であると考えました。サイコ(精神)をシンセシス(統合)するという視点で発達させた統合志向の心理(サイコ)学(ロジー)です」と説明を進めます。心の体験する現象は複雑で、原因と結果が絡み合って、本当は「なにが原因か」の分析は容易ではありません。そして、全てを分析する事はできないので、いくつかの要素を選び分析するのです。分析できたものは、全体の中のほんの一部の要素にしかすぎないのですが、その一部の要素の分析結果をもって、全体が全てそうであると還元するというのが、分析主義の欠点として、現在の科学はほとんどこの様にしてなりたっています。複合原因の場合はさらに分析は困難です。分析出来ても、解決に利用できない事もあります。また、世の中には、分析不能だけど、精神を高め喜びを与えて人生を豊かにしてくれるものがあります。芸術(彫刻や絵画や音楽や踊り)や・武道・ヨガなど身体を使った修養体系があります。素晴らしい人生の高みをめざすという全人格的(ホリスティック)なプロセスの内に、抱えている問題も解消するという取り組みをしています。「病気」として捉えそれを「治す」という消極的な姿勢は、逆効果になることもあるからです。私は、フロイトやユングに論理・分析的なゲルマン文化の流れを感じ、アサジオーリには、分析にこだわらず、全体的に人生をとらえると言う人間中心主義のイタリア文化を感じます。
2. この本「サイコシンセシス」について
この本は、アサジオーリが1930年代に書いた著作類を、35年以上もかけた実践を通じて書き直してゆき、1965年に「サイコシンセシス」として出版したものです。この翻訳には、1976年にペンギンからエサレン・ブックとして出版された英語版の二版を使っています。出版されてからも32年の実践があります。この本は、日本語訳されたサイコシンセシスの本のなかでも、理論的な枠組み・概念・実践的手法が、キッチリと押さえて書かれています。それぞれの手法が、1.目的/2.理論的根拠/3.手順/4.適応と応用/5.限界と禁忌/6.他の技法との組み合わせ/というように書かれているのは、実践の結晶として出来あがった本の強みです。反面、気楽に読める紹介本とは言えません。この本は、多様なトランスパーソナル心理学を実践する人には、海図のようなものかも知れません。というのは、日本にはエサレン研究所が発祥の地ともいえるトランスパーソナル心理学の方が、サイコシンセシスより先に紹介されました。その基本概念や考え方にサイコシンセシスのものが伝わっているので、トランスパーソナル心理学がどの様に位置づけられるか整理できると思います。シュタイナーやグルジェフなどの精神的に偉大な教師の教育体系を進めている人や、伝統的な精神世界にいる人にも、それぞれ取り組んでいる体系と、他の体系を整理するのに役にたつと思います。アサジオーリは「宗教経験は違った形式や言葉で表現されることがある」と言っています。他の心理学の体系、例えば、アドラー心理学やユング派の心理学や、実存主義心理学、ロジャーズの心理学などに取り組んでいる人には、サイコシンセシスとの共通点と手法の違いなども説明されています。ホリスティック教育に関心のある人には、最初にフェルーチの「内なる可能性」誠信書房刊(少なくとも、序章の「全体性を見ること」)でサイコシンセシスの考えるホリスティックな枠組みを理解していただき、教育現場で使えるエキササイズがいっぱいの「喜びの教育」春秋社刊を参考にし、それからこの本を読むと、いま現実に自分のしていること/自分の願っている事/努力してめざしている事が整理されるかも知れません。というのは、教育に携わる人は、実利的な教育技法を次から次へと求め、一生懸命になるあまり、いろいろな技法の科学的根拠や限界などを考慮しないで進める傾向があります。うまく行かなかったり限界を感じたり、飽きた時に、次の流行を追うという傾向に陥りやすいと考えるからです。他のサイコシンセシスの本としては、アサジオーリ著で「意志の働き」誠信書房刊、「やさしいサイコシンセシス」春秋社刊、「無条件の愛と許し」スタウファー著、誠信書房刊、他に「誘導イメージと音楽のCD・心の別荘」全三巻平松園枝著等があります。
3. サイコシンセシスの人間観
サイコシンセシスでは、卵形図形のように、人間の意識を多層・立体的に捉えています。
ホリスティックにつながる大切なものを紹介します。
(図=卵形図形)
1. 下位の無意識
2. 中位の無意識 3.上位の無意識 4. 意識の領域
5. 意識の中心のセルフあるいは「わたし」
6. トランスパーソナル・セルフ 7.集合的無意識
3.1 サブ・パーソナリティ
人間の性格について、多面的に捉えています。性格分類心理学のように、性格を一つであると固定的に考えていません。当然、「生徒の性格分類を考えて指導(教えてやる)してやる」というスタンスは採りません。自分の内に住んでいる大勢の違った性格の人たち(内なる動物、赤ん坊、幼児、少年、大人、親、老人、高次元の自己、母性や父性とよぶ様々なサブ・パーソナリティー達)があると捉えます。どんな人にも、内なる人々のなかには、傷ついた(トラウマ)部分や、押さえ込まれた感情が爆発寸前のサブ・パーソナリティーがあり、他との関係がうまく行ってい事があります。しかし、問題があるからと言って、その人の全体が悪いという見方はしません。ひとつひとつの願いを聞き、かなえ、育てる事が全体の調和(個人のシンセシス)をもたらすと考えます。サブ・パーソナリティー全体の為の民主主義の実現をめざすのです。
最近流行の言葉に「多重人格」や「アダルト・チルドレン」という全人格を否定し排除するような見方がありますが、サイコシンセシスの見方では、「内なる子供が横暴になり、その他のサブ・パーソナリティーに迷惑をかけて、実生活で問題を起こしている」と理解します。アダルト・チルドレンは、本当は、「うまく育たなかった内なる子供」であると私は捉えています。内なる子供は、うまく育つと、夢を育て人生を感動とワクワクしたものに変えてくれるのです。私の好きな英語の子供の歌に、「四歳の子供の時が一番アイスクリームがおいしい。"Ice
cream cones taste best when you are four years
old!"」というのがあります。イキイキとした内なる子供が住んでいる大人には、たとえ、小さな事でも心から喜びを感じることが出来るのです。つまり、いくつになっても、「アイスクリームはおいしい」のです。その味を台無しにしているのは、むしろ、内なる教師や批評家や皮肉屋の大人のサブ・パーソナリティーなのです。
3.2 トランスパーソナル・セルフの領域
サイコシンセシスでは、上位の無意識や個人を超えたトランスパーソナルな領域(セルフ)をも扱います。この領域は芸術・直感・啓示の源で、宗教の領域でもあり、人間に深い満足と安寧(やすらぎ)の源として大切な部分です。日本の教師達は、「宗教の領域には立ち入らない」という思いが強いようです。どれを信じ教えたら良いかが、教師自身判断しにくいからです。(日本の教師を責めているのではなく、その正直さと良識に敬意を払って書いています。)オーム真理教や逸脱した宗教団体の目に余る事件で、ますます、「触れないでおこう」という姿勢が強くなっています。アサジオーリは、「宗教経験が違った形式や言葉で表現される」と言っています。日本の先生達に、この大切な部分を理解するガイドラインとしてぜひ読んで欲しいと思うところです。
4. サイコシンセシスの特徴的な技法
サイコシンセシスには非常にたくさんの目的別の技法が開発されているが、「これがサイコシンセシスである」と一つの技法・個人・組織を主張することはありません。教育につながる技法としては、次の様なものがあります。
4.1 意志・自主性を育てる
善意(Love)ある巧みな意志を育てる為の様々なワークがあります。「成せば成る」という融通の利かない意志や「自分」と「まわり」の命を尊重しない冷酷な意志ではなく、善意ある巧みな意志に育てる事をめざしています。オーケストラの指揮者のような役割を持つ自分(セルフ)が、巧みな能力を育て発揮することで、サブ・パーソナリティーひとりひとりの個性ある願いを尊重して、全体としてのシンフォニー(交響曲)を良いものにするのと同じです。
4.2
イメージワーク=誘導イメージ(guided imagery)を積極的に使う
サイコシンセシスでは意志の他に「イマジネーション」を大切にしています。サイコシンセシスというとイメージワークと誤解される程です。自分にとって「現実」である「心の中の世界」で、美しい情景を想像し、そこでものを見たり・聞いたり・動いたり・匂ったり・味わったりという心地よい体験を積み重ねます。それにより、身体のレベルでは、疲労回復・免疫力の改善がみられ、ストレスに強くなります。心理面では、自分に問題を起こしているサブ・パーソナリティー(感情的になった自分、傷ついた自分、エゴに満ちた自分)を見つけ対話を始めます。芸術・精神分野では、感覚が鋭くなりインスピレーションで満ちた来ます。対人関係では、交渉力を高め問題解決をはかるように、組み立てることもあります。現在この誘導イメージワークを、独立したセラピーとしている人たちがいます。日本でもよく使われるようになりました。テクニックが絶対視され、その禁忌を無視して使われることに対して、マインド・コントロールの手段として使われたり、偏った目標達成のため自己暗示的に使われる事に危惧を感じています。サイコシンセシスの場合は、どんな目的で使われるときでも、同時に「自らの意志で選択する力」を育てる様に組み立てています
4.3 芸術を全人格的な統合のために取り入れている。
初期の頃から、セラピー(悪い所を標準にもどす)いう消極的な姿勢ではなく、人生の高みを経験する手段として、全人格的な調和・統合をめざすという姿勢で、音楽や絵画やシンボルやダンスなどを利用しています。
4.4 identification(アイデンティティ=同一化)とdis-identification(脱同一化)
人には、自分のやりたい事・理想とする事に対して「ああしたい・ああなりたい。」という強い衝動を持っています。これを、同一化(アイデンティティ)と言います。エリクソンやフロム等の心理学者が触れており、日本の教育界にも紹介されています。サイコシンセシスでは、「人間は、良いものであれ悪いものであれ、関心のあるもの(同一視するもの)から影響を受ける。誰が・どんな組織や・モノが・信念や・考えが・自分のどの様な感情や性格が、自分のあり方に影響を与えているか気づいている必要がある。」と考えます。その上で、「自分の意志で離れる自由(脱同一化する力を)を持つこと」が大切であると考えます。主体的に離れる力を持たなければ、それが良いものであったとしても、執着であり、本当の自由があるとは言えないからです。離れる自由があるからこそ、自らの意志で選択(=巧みな同一化)する自由自在さが生まれてきます。衝動的に何か(アイデンティティ)を求めて突き進む若者の自由のない「自由を求める行動」とは質的に違います。成熟した同一化です。その結果、以前と同じ事をしていても、自由自在なのです。オーム心理教などに洗脳された人や依存症の傾向にある人にはこの脱同一化の能力を育てることが大切であると考えます。
4.5 上位の意識やトランスパーソナルな意識(啓示やインスピレーション)との交流をはかる
疑いもなく人生には病気・老いる事・死の苦しみ(絶対苦)、人との出会いと離別の苦しみ等に満ちており諸行無常であるが、同時に神秘的でもあり美しくもあり、笑いにも喜びにも満ちています。トランスパーソナルな意識とつながることにより、毎日何気なく見ていた花や緑の色が鮮やかに感じられるようになり、音楽や言葉が体にしみ入り、食べ物の味や匂いに敏感になります。また、自分や人との「つながりかた」の内に、新しい喜びを発見することでしょう。病気や苦しみの中でさえも、安寧(やすらぎ)と喜び(至高体験)を感じる事ができるのです。
4.6 対話により進んで行く。
ほとんどのワークは自分自身(サブ・パーソナリティー)との対話や、他の参加者との対話を通じて行われます。「人間に一番の苦しみを与えてくれるのは、人間関係です」しかし、忘れてはならないのは、「一番の喜びを与えてくれるのも人間関係です」人とのつながりのを豊かにするために、対話(心のキャッチボール)は、大切です。長く楽しく続けるのには、巧みで善意ある意志が必要です。
5. サイコシンセシスの対象
あらゆる能力を持つ人と、子供から死を迎える人までが、対象となります。サイコシンセシスでは、ホリスティックを「始めから最後までの人生全体」という意味でもとらえています。「それぞれが特別な個性と才能を伸ばす可能性を持つ」というのがアサジオーリの姿勢で、平均とか標準という定量的な評価をあえて取りません。日本の教育界では、「みんなの為」という建前だけの平均・平等・管理主義で、結果的に特別な人達が排除される傾向にあります。特別な人とは、身体や知的に障害を持つ人達と、特別にすぐれた能力を持つ人達です。障害者教育は、以前よりは良くなりつつあるが、芸術や音楽や数学などの分野で、教師達よりもはるかにすぐれた能力を示す超秀才や天才と言われる子供達と、どの様に接して行くかという事が用意されていないようです。平均主義=切り捨て主義のクラスでは、特別な生徒達の才能や集中の度合いが違うので、無視さりたり、逆に、異常とみなされてしまいます。何万人ものエジソンのような才能の芽が枯れてしまっているのでしよう。忘れないで欲しいのは、死が近づくと、全ての人が特別な人(身体も心も障害状態)になるという事実です。特別な人と隔離されて育った世代は、特別な人と接する方を知らないし、関心が育ちません。だから、あなたが老いて特別の人になった時に、子供の世代は理解も同情もないし、どう接して良いかわかりません。邪魔者扱いされてどこかに隔離されて汚れたおしめをした寝たきりで独りぼっちのあなたは、何の心の支えもなく死んで行くことになるのです。サイコシンセシスの対象は、学校や平均的な人に限っていません。生まれてから死ぬまでの全体をみるという視点です。
6. サイコシンセシスの進め方
6.1 ガイド VS.
旅人
この本がでてから、サイコシンセシスのスタンスにかわった事があります。本が出た65年頃の風潮と違い、現在ではサイコシンセシスでは、セラピストと患者という上下関係は取らなくなりました。替わりに、同行し案内するするガイドという視点で参加する人に接しています。どう言うことかというと、「これが最高・最良の方法だ」という布教的態度はとらないのです。しかし、「それぞれの方法で最高に良い体験をした」という個人の体験を「祝う」し「尊重」します。ガイドは全員を一番高い一つ山(エベレスト)に案内するわけではありません。本人の望むふさわしい所にガイドするのです。「一番高い山に登ったときの喜び」と「近くの里山に登ったときの喜び」も、同じように貴重な体験です。「高い山の方が素晴らしい」という「内なるしつけ教師」や「批評家」が「近くの山に登る楽しみ」をダメする事もあるのです。
6.2 リラックスしてゆっくりと急ぐ事を大切にガイドする
私のサイコシンセシスの講座は、心の成長のペースを尊重し、非常にリラックスした和やかな雰囲気の内で進む事を大切にしています。心の時計は、機械の時計(時間割)の通りには進まない=育たないからです。心身がリラックスした時には、自然治癒力・免疫力がたかまり、病気の回復・予防になる。また、学習能力や問題解決能力は高まるのです。我々の多くはこの事を頭では知っている。しかしリラックスするのは簡単ではない。というのは学校教育ではリラックスよりも緊張により能力を高める事を教えてきたからです。「リラックスしろ」と声を聞くと、今までの失敗を思い浮かべ、ますます緊張状態が高まる悪循環もあるからです。心身が緊張した状態でサイコシンセシスを学ぶことは、ネクタイを締めスーツを着て靴をはいて、ベットの内で安眠法を学ぶのと同じです。アサジオーリは、仕事中でも家にいるときでも、可能な限り、疲れを感じたときには断固として仕事の手をやめなければならないと言っています。急ぎたい気持ちをコントロールして、短い賢明な休息を頻繁に取るように進めています。私が、米国でサイコシンセシスの勉強をしている時に、二時間ぐらいのセッションの間にも、必ず疲れをとる短時間のストレッチや積極的休息法が随時行われていました。日本の学校でも会社でも、リラックスとイメージワークを授業時間内に取りいけれれば、学習と生産能率の向上につながると確信しています。
7. サイコシンセシスから見たホリスティック教育への提言
7.1 「全人格的」vs.「クラス全体的」
サイコシンセシスでのホリスティックは「全人格的」という意味です。「全体的」という意味ではありません。教師の関心が学級や学校全体の運営という視点である限り、名前を変えた集団主義教育になってしまうことを危惧します。一人一人の能力が十分発揮されて、全体が良くなるのは、ホリスティックといえるが、「みんなの為」「組織全体の調和」が最初に来て、その為に個人が働くというのは、本当のホリスティックでしょうか。欧米ではサイコシンセシスの技法は学校教育に応用されていています。「喜びの教育」の本でも、クラスで取り組むワーク例がいっぱい出ていますが、「良い授業とは」とか「良い学級とは」という「空想的・抽象的発想」はないようです。これは、日本固有の集団帰属主義の教育伝統ではないでしょうか。「先生にとって良い学級」が「ひとりひとりが特別な才能を持つ生徒」全員に「よい学級」なのでしょうか。運命共同体としての学級は、欧米にはありません。才能に応じてクラス分けするけども、年齢にはこだわりません。社会は急速に構造変換しています。残念ながら、終身雇用制度はなくなり続け、恩恵を受けているのは日本人の三分の一にもなりません。それなのに「みんなの為」「組織全体の調和」というのがホリスティック教育の目的だとすると、それは、三分の一の終身雇用組に属す教師達による、三分の一の少数のための教育になってしまいます。ホリスティックの意味をそれぞれが考えて欲しいと思います。
7.2 ホリスティックは一つではない。
サイコシンセシスでは、ホリスティックは全人格的ではあるけれども、一つではないと考えます。それぞれの意志で選択したライフ・スタイルを統合する事が目的です。人が素晴らしい体験をした事を「祝い」編み出した体系を「尊重」します。それぞれの手法や体系の内に、素晴らしい人間模様が存在していると考えるからです。しかし、「私達の信じる、○○という人の体験し編み出した全人格的な体系が最高である」と信じて布教的態度を取ることには同意しません。「すばらしいと信じること」と、「すばらしい体験をすること」は同じではありません。脱同一化をしてください。人間のすばらしさや多様性を尊重し、自らの意志で選択した方法でそれぞれのホリスティックなライフ・スタイルを実現してほしいと願います。
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<<愛することを選ぶの紹介文>> by
Iwasaki
スコットランドの、spiritualなコミュニティのフィンドホーン財団の創設者ののキャデイとサイコシンセシスの指導者のブ
ラッツが書いた本です。
この本は、サイコシンセシスでの大切にしている「意志のワーク」の視点からのワークショップが本になったものです。「自らの意志」で「世界との関わり方を選ぶ事」、「選択することの難しさや障害」などについて、そして、その乗り越え方などについても、触れています。本(地図)だけをたよりに進むのですから、実際のガイドがいる場合と比べると、現実の現地の旅は楽とは言えないかも知れません。進むことは可能です。簡単なことから始め「自分」にとって、「ライフ(いのち・生活・人生)」全体に必要なホリスティックな選択をすることを考えてみませんか。本では以下の内容があつかわれています。
1.許容することを選ぶ
2.安全であると感じることを選ぶ
3.信頼することを選ぶ
4.正直でオープンであることを選ぶ
5.気づくことを選ぶ
6.あるがままを受け入れることを選ぶ
7.自由であることを選ぶ
8.行動する事を選ぶ
9.変化することを選ぶ
10.無条件に愛することを選ぶ
どのように行為するかを選ぶことは、その人の現在と未来の「ライフ(いのち・生活
・人生)」につよく影響を与えます。いい選択をやり続けてください。
元の本の紹介に戻る
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「ホリスティックな教師」の岩崎のおすすめの言葉
学校をでてからは、自分自身が自分自身の「父」であり「母」であり「教師」です。
教育に関係ないと思わないで、できたら読んでください。
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第一部 ホリスティックな見方
一章 ホリスティック教育とは何か
二章 知ることと学ぶこと
三章 共感と真実性
第二部 教師の自己変容
四章 心の静けさ
a 瞑想の働き
b なぜ瞑想をするか
c 瞑想のタイプ
知性による瞑想 / 感情による瞑想/ 身体による瞑想/
行為による瞑想 / 瞑想をはじめるにあたって
d 教師のための瞑想
e 瞑想体験から
五章 イメージ
a イメージの種類
b イメージワークのはたらき
c イメージワークの実際
六章 からだの運動
a 運動の働き
b 運動と教育
第三部 ホリスティックな教え方
七章 ホリスティックな授業
a 論理的思考と直感のつながり
b 身体とこころのつながり
c 教科のつながり
d コミュニティとのつながり
e 地球とのつながり
f 自己とのつながり
八章 ホリスティックな教師になるために
a 疑問に答える
1 教師の自己変容について
2 授業で用いるセンタリングについて
b 教師のための自己変容のプログラム
1 瞑想とイメージワーク
2 ペースをおとす/スローダウン
3 運動をする
4 奉仕をする
5 日記をつける
6 ゆとりをもつ
7 ユーモアとわらい
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